自転車コラム INDEX




  サイクリング in イギリス その3

ウォーキングからウェイブリッジへ

ベイジングストーク運河からウェイブリッジへ向かうウェイ・ナビゲーションとの分岐点にて

その1、その2で紹介したベイジングストーク運河は、ウォーキングとウェイブリッジの間にある町バイフリートで、ロンドンを取巻く高速道路M25にぶつかり、ウェイ・ナビゲーション(水路)に繋がっている。そしてこの水路はウェイブリッジの北側でテムズ川に合流する。今回はこのベイジングストーク運河とウェイ・ナビゲーションを探索した。

サイクリング・トレイルに素晴らしい緑の回廊を提供しているベイジングストーク運河について調べてみた。この運河はハンプシャー州のオディハムに端を発し、全長37マイル(約60km)あり、29のロック(閘門)を有している。完成したのは1794年で、農業の振興が目的だった。長いボートに石炭や化学肥料を積んでロンドンからハンプシャー州まで運び、帰りの船で木材やとうもろこしやその他農産物を首都に運搬した。しかし運河は商業的には成功せず、1960年代半ばには殆んど見捨てられてしまった。全てのロックは衰退し、トーパス(引き船道)は船が増え過ぎ、水路は雑草や廃棄物や泥で覆われてしまった。この荒廃を止めたのはサリー州とハンプシャー州の運河協会だった。復旧活動は1991年に完了し、運河が再開した。

一方ウェイ・ナビゲーションは、1653年に拓かれたイギリスで最も古い水路の一つである。イングランド州西南部中央の町ゴダルミンからウェイブリッジまで20マイル(約32km)あり、全英2000マイル(3200km)に及ぶ運河網の最南端に位置している。この水路を上下したのは、木材、石炭、トウモロコシ、花、更には火薬などであった。1796年にベイジングストーク運河と接続された。

イギリスに来てから数ヶ月間に10数冊のサイクリング関係の本を買い込んだが、偶然その中の一冊に詳しい説明が載っているのを見つけた。これらの情報はその図書*1 から引用したものである。

*1
書名:「TRAFFIC-FREE CYCLE TRAILS」
(MORE THAN 400 ROUTES AROUND BRITAIN)
編集者: Mr. Nick Cotton 出版社: CycleCity Guides
www.cyclecityguides.co.uk

分岐点からウェイブリッジまでは僅か3マイル(約4.8km) ウェイブリッジの1km手前にあるコックセス・ロックにて、JCAジャージを初めて着て走る

ベイジングストーク運河からウェイ・ナビゲーション水路への分岐点には標識が立っていた。ウェイブリッジまで3マイル(4.8km)とある。今日はウェイブリッジで折り返して帰ることにしたが、このサイクリング・トレイルは更にテムズ川沿いをロンドンの中心に近いプットニー・ブリッジ(橋)まで続いている。沢山の船を見ながらサイクリング・トレイルを走っていくと、少し開けた場所に出た。ここにはコックセス・ロックがあり、立派な洒落た建物と共に周囲の景色にうまく熔け込んでいた。ロックと建物を背景にセルフタイマーをセットして写真に納まった。上手い具合に数日前、日本から別送した航空便が到着し、JCA(Japan Cycling Association)のジャージーが手に入ったのでさっそく着用した。

教会を背景に装備完備した愛車TREK

今回は自転車の装備を見直した。前回オンロードを走ったとき、オフロード専用タイヤではとても重くスピードが出なかったので、自宅の前のEVANCEスポーツサイクル店で、オフロード6割オンロード4割くらいのMTB用タイヤに交換した。お陰でオンロードも快適に走ることが出来た。また一日の中でも天気が良く変わるので(イギリスでは“一日の中に四季がある"と言われている)、オフロードの雨対策として前後泥除けを装着した。また地図もハンドルに取り付けた。

セント・ジェームズ・ウェイブリッジのパリッシュ教会の立派な案内板 通りの名前もチャーチ・レーン

しかし今日は幸い良い天気に恵まれて、泥除けはその効果を発揮するまでには至らなかった。ウォーキングの自宅を出てから2時間くらいでウェイブリッジの町の中心に到着した。途中の景色の良さと、すれ違う人たちのマナーの良さは、前にも報告したとおり素晴らしかった。チャーチ通りとチャーチ・レーンという名前の二つの通りの角に教会があった。教会の前には立派な看板があり、「セント・ジェームズ・ウェイブリッジ パリッシュ教会」と記されていた。教会の周りは人気がなく静まり返っていた。教会の塔が緑に映えて美しいので、何枚か写真を撮ることにした。

教会の塔とTREK 木が邪魔をして教会の塔が写らない 美しい教会の塔のアングルを求めて数メーターカメラを構えたまま移動撮影には成功したが......

ハプニングはこのとき起きた。写真で分かるように、木々の緑が邪魔をして教会の塔を隠していたので、カメラのアングルを求めて数メートル横に移動した。そして良い写真が取れたと思って満足して自転車を振り返ると、そこには古ぼけたワイヤーの切れた自転車が横たわっているだけで、今回やっと装備の完了した自分のTREKは影も形もなかった。物音が聞こえなかったのが不思議だった。幸い貴重品は自転車から外し、肩にぶら下げていたのでパニックにならずに済んだが、しばし呆然とした。辺りには相変わらず人気はなかった。

事前に付近の地図を確認して記憶していたので、ウェイブリッジ駅まで15分くらい歩いて、ウォーキングまで切符を買って電車で帰宅した。この後、サイクルショップでの相談や警察への盗難届け、保険会社への申請など、いろいろと面倒なことが待ち受けていた。いずれにせよ天から与えられた得がたい貴重な体験なので、ここに紙面を借りて報告したい。
(中田 修二)