「あこがれの国産車 -昭40年代の名車たち-」と「マツダ車デザインの系譜」


広島市交通科学館は、1995年の開館当初から自動車、オートバイ、モータースポーツ、自動車デザインなどの企画展を積極的に展開されています。2008年「まぼろしのスーパーカー展」でマツダRX500の公開、2009年「カーレース -日本からの挑戦-展」ではマキF1、2010年「エンジン展-栄光のレースエンジン-」では、マツダ R26B(787B)、マツダ MV10(MX-R01)、アプリリア RSV4が展示されるなど、とても興味深い企画展が開催されています。

さて、今年の「あこがれの国産車-昭和40年代の名車たち-」ではジウジアーロ(ベルトーネ)デザインの初代ルーチェのプロトタイプが展示されています。
この希少なジウジアーロのプロトタイプを見学に全国から多くの来場者があるそうです。







マツダ S8P(初代ルーチェ プロトタイプ)
ロータリーエンジンを搭載する小林平治氏デザインのコスモスポーツのデザイン決定した半年後、イタリア・ベルトーネ社へロータリーエンジンを搭載するFFセダンのデザインおよびプロトタイプの製作を依頼します。ベルトーネでデザインを担当したのはジウジアーロ氏。ベルトーネからプロトタイプが納品されたのが1964年(昭和39年)7月。
このプロトタイプはS8Pと呼ばれ、ロータリーエンジンを搭載したフラッグシップモデルであった。しかしながら搭載するロータリーエンジンが完成していないことからS8Pはお蔵入りする運命を背負っていました。
ところが、S8Pが納品された2ヶ月後には織田泰爾氏の手によりS8Pの美しいラインを残し、エンジンルームをかさ上げし、レシプロエンジンを搭載、駆動方式もFRとなったルーチェが作られました。このルーチェは1965年(昭和40年)の東京モーターショーにルーチェ1500として展示され、翌年初代ルーチェとして市販が始まりました。

ジウジアーロデザインのS8P
FF 2ロータのロータリーエンジン
(エンジン本体はモックアップ)
当時の質感を維持しているインテリア
ダイヤル式の三角窓開閉ダイヤル トランクルーム
(ガソリンタンクとスペアタイアは並んでいます)

ロータリーエンジンを前輪駆動としてS8Pのプロトタイプの製作は続けられ延べ5台の試作車が作られたそうです。それに平行してS8Pのクーペ化も進行しており、FFセダンの開発は中止となりましたがS8Pはルーチェロータリークーペとしての道を歩んでいくことになります。
1963年(昭和38年)にベルトール社にデザインと試作車を依頼した際、デザインは4ドアと2ドアだったそうです。このことからS8Pは、当初からクーペにすることが予定されていたと思われます。

S8Pは、アルファロメオ2600スプリントの部品が数多く流用されている。時期的みてフラグシップという使命、2ドアクーペというデザインを考えると合致します。

ベルトーネの工場でアルファロメオ2600スプリントと並ぶS8P
ルーチェロータリークーペのプロトタイプ M10P(写真左) M12P(写真右)
東京モーターショーにRX87として公開された2年後の1969年(昭和44年)にルーチェロータリークーペとして発売されました。
福田成徳氏がこの線図を絵描いたことによって、S8Pからレシプロ・ルーチェ、ルーチェロータリークーペが派生し誕生したことが理解出来ます。この線図はとても貴重な資料です。

ベルトーネ社ガンディーニ デザインのS15Aと呼ばれルーチェのプロトタイプが1968年(昭和43年)に納品され試作車も製造されました。このS15Aの1/2の線図が公開されています。Web、誌面などメディアでの公開が出来ないため広島市交通科学館2階展示場にて、ジウジアーロとガンディーニのルーチェ プロトタイプの違いを見比べて下さい。
デザイントークショー 「マツダ車デザインの系譜」

企画展「あこがれの国産車 -昭40年代の名車たち-」は車のデザインを見て頂く展示でもあり、デザイントークショーが7月24日に開催されました。

講師は、マツダ デザイン本部長の前田育男氏、デザイン本部チーフデザイナー中山雅氏、
元マツダ デザイン本部長の福田成徳氏、S8Pのレストアを担当されたガルフォースワンの栃林昭二氏の4名で開催されました。

乗用車の黎明期は社外の工業デザイナー小杉二郎氏が担当しR360クーペ、キャロルなどを担当、マイクロクーペ、クリフカットのセダンとワクワクするデザインを発表しています。
軽自動車から普通乗用車市場をにらんで、小杉二郎氏はマツダ1000を1962年(昭和37年)に全国自動車ショーに出展しています。
実は、その頃ベルトーネ社と提携していたマツダは社内デザインへとシフトが始まっていました。初代ファミリアバンのデザインを担当したのは、サバナン、初代FFカペラ、後に「ときめきのデザイン」でユーノス500・ロードスター、FD3S RX-7を世に送り出した元デザイン本部長の福田成徳氏です。
コスモスポーツはマツダスポーカーデザインの原点です。小林平治氏が担当されたコスモスポーツのデサインは、マツダオリジナルデザインのベースとなりました。キャノピーはRX-7、ロードスター、RX-8などへ引き継がれマツダ スポーツカーのDNAとなっているそうです。
初代マツダ デザイン本部長前田又三郎氏がデザインしたSA22C RX-7(写真左) とコスモAP(写真右)
RX-8をデサインされた前田デザイン本部長は、葉巻型スポーツカーのノーズデザインを実現したかったそうです。それは、ピニンファリーナがサイクルフェンダーのデサインを止めたあと、再びサイクルフェンダーを復活させたのが前田デザイン本部長です。このデザインはメルセデス・ベンツ、トヨタなどのデザインに影響を与えています。(写真右)

前田氏はRX-8の次にデミオのデザインを担当されています。(写真下)
靭(SHINARI)は、デザイナーとして思いを100%つめたダイナミックなデザインでマツダのフラッグシップとしてデザインしたそうです。
魂動という魂をもった動きをデザインテーマでブランドを引張り、世界に打って出る。期待して欲しいと力強いメーセージがありました。

金属のシナリを表現した 靭(SHINARI)
勢(MINAGI)は、中山雅チーフデザイナーが担当、魂動というデザインテーマに沿って「カッイイ、美しいSUVを造りたかった」そうです。陸上競技の「イチについて」「ヨウイ」「ドン」の「ド」の瞬間をデザインし、モチーフとなったのはチータとのこと。四つのタイヤを手足とし動物がもっているダイナニズムを表現しているそうです。

3月1日のジュネーブショーで公開された 勢(MINAGI) (写真左)

9月13日からのフランクフルトモーターショーで公開されるCX-5 (写真右)
左から元デザイン本部長の福田成徳氏、デザイン本部長の前田育男氏、チーフデザイナー中山雅氏。昔も今も、スポーツカーが好きという方がデザインしているマツダから目が離せません。 S8P、ルーチェロータリークーペと並んで展示されている117クーペ。ジウジアーロデザインの3兄弟。クレイでは表現出来ない「鉄を叩いた」姿を見ることが出来ます。
展示車両
・マツダ コスモスポーツ
・マツダ サバンナ クーペGSU
・マツダ ルーチェロータリークーペ SDX
・マツダ サバンナRX-7 GT
・ニッサン スカイライン 2000GT-R
・ニッサン チェリー X-1・R
・ダットサン ブルーバード 1800 SSSクーペ
・ダットサン フェアレディ2000
・トヨタ スポーツ800
・ホンダ S600
・三菱 ギャランGTO MR
・いすゞ 117クーペ1800 (ハンドメイド117)
・いすゞ ベレット1600GTR
・マツダ 初代ルーチェ プロトタイプ(マツダ S8P)
協力:広島市交通科学館

おわりに
広島市交通科学館 企画展「あこがれの国産車 -昭40年代の名車たち-」
場所:広島市交通科学館 http://www.vehicle.city.hiroshima.jp/
2011年 7月16日(土)〜9月4日(日)
開館時間 9:00〜17:00 (2階以上への入場は16:30まで)
休館日: 7月19日(火)、7月25日(月)
(professorイノウエ)