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聖地への入り口 〜ニュルブルクリンク・サーキットの駐車場で〜  

アウディ・ドライビングエキスペリエンス ドイツ・ツアーのクライマックスはニュルブルクリンク・サーキットでの走行だった。実は私にとってココは何度かチャンスはあったのに訪れることのできなかった所。だから、参加者の方たち同様このチャンスを心待ちにしていた。なぜなら、世界の名だたる自動車メーカーが、よりハイレベルなクルマを開発するためにここを訪れることでも有名で、クルマ好きにとっては聖地とも言えるこのサーキットだから。

ニュルに向かうアウトバーンで、イギリスナンバーのミニとアウディTTに出会い、彼らも同じ場所を目指し走っていることは、そのメリハリの効いた走りっぷりからうかがい知ることができた。ガソリンスタンドでもそれらしいフェラーリと出会い、目的地ではどんな光景が待っているのかとますます期待が膨らんだ。  到着したときの最初の印象は、たぶんずっと忘れられないと思う。私の聖地“ニュルブルクリンク”に対する想像と現実がこんなにも異なるものだとは思ってもいなかったからだ。


まず一般走行が行われる北コースの駐車場は、まるで公園の駐車場みたいなところだった。そしてそこには普通のセダンや新旧様々なスポーティカーもたくさんやってきていたけれど、何よりも驚いたのは、私たちがこの数日で2000kmほどあちこちを走ってきても出会うことのなかったスーパーカーやスポーツカーたちの数。日本の小奇麗な公園の一般駐車場に集うそれらをイメージしていただきたい。ツアー中、ポルシェでさえ、目黒通りや環八を走っているほうがよほど遭遇率は高いと思っていたほどだ。ところがココにはカレラGTをはじめ、たくさんのハイスペック・ポルシェがワンサカといるではないか。「これぞ、ニュル(ドイツ)!」私のミーハー的テンションは新たなクルマへと視線を移す度にグングングーンと上がっていった。ドライバーの多くは見るからにお金を持っていそうなオジサマたち。それを知った私は、後に、彼らたちにいとも簡単に抜かれることなど想像もせず、「大丈夫かしら? もったいない」と余計な心配をしていたのだ。笑ってやってください(苦笑)。

クルマで溢れかえる駐車場でのウォッチングも楽しいが、そろそろ走行の準備をしにピットとかパドックに移動したほうがいいと思っていたら、「そんなものはないよ、みんなここからゲートを通ってコースに入るだけだから…」と言う。「えっ?」、私のサーキット走行の概念が高層ビルの爆破倒壊シーンのごとく崩れた瞬間がコレだ。ヘッドライトを万一のクラッシュに備えてガムテープで固定する人などいない。タイヤのマシ締めをする姿もない。もちろん、ジャッキアップをしてタイヤ交換をしている人なんていない。駐車場にやってきたら、チケットを買って走行開始を待つだけ。オジサマたちはクルマのまわりで優雅に談笑している。サーキットを走るというのにヘルメットやレーシングスーツ、グローブの着用義務もなく、みんな普段着のままコースインしていっていいのだ。コースインというものにも緊張感がない。公園の駐車場で清算済みのチケットをマシンに入れ、ゲートを通過するのと何も変わらない風景がココにはあったのだ。


一般走行が可能な北コースはノルドシュライフェとかオールドコースと呼ばれる。ココではクルマだけでなくオートバイやコース見学バスまでが同時に走行をする。走行中にコース修繕工事も行われていた。何てキケンで、何て普通の道路みたいなのだろう。アクシデントで走行が中断されることもしばしばあると言う。それは、そうだろう。それでも、ドライバーは自分の責任で走るから、どんなクルマでどんな服装で走ってもいいのだ。自己責任が刷り込まれた国に存在し続けるクルマの聖地の入り口は、想像もつかぬほど平凡な場所から始まるのだった。(続きをお楽しみに)