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ふたたびハナのこと
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二匹のブラック・ラブラドール、アニモとハナは母のラウムに乗るのが大好きだった。
お散歩のあとはそれぞれの家に入りたがらず、ラウムの中になら大人しく入っていく。そして、いつも黒い大きな顔を後席の窓から出し、次のお散歩のチャンスをうかがっていた。
アニモはよく脱走をしてお友達の犬に会いに行くことがあった。会いに行くのはいつも同じ犬で、それがオスだというのでいつも私たち家族の笑い話だった。アニモの脱走に気づいた私たちが歩いて迎えにいってもなかなか帰る気になってくれない。そこで改めて母のラウムで行くと、すぐに乗り込むのだ。それに気づいてからは、脱走したことがわかると、近所までラウムを走らせることがしばしばあった。
ラウムが彼らのセカンドハウスだったみたいだ。そのせいで、車内は脱臭してもお掃除をしても犬のニオイがなくなることはなく、あらゆるところがキズだらけ、窓はヨダレだらけ…。母に買い替えをすすめても、どうせまた汚れるからと拒み続けた。
アニモが亡くなったあと、母はハナを乗せ茨城の親戚の家までオンナ一人と一匹のドライブ旅行にも出かけている。田舎のクルマはもっぱら足がわり。「ちょっとそこまでだから…」とシートベルトを忘れる母に何度もベルトを締めるように注意をしたことがある。そんな母が一人で茨城までボロボロ(主に内装)のラウムで行くという。しかもホテルに預けるのも可哀相だからハナを連れていくと言うのだ。不安と心配はもちろんのこと、そんな計画を企てた母が可愛くてちょっとワクワクした気持ちで私は毎日アメリカから電話をした。そのとき私はアメリカに住んでいたので同行できなかったことはハナが生きていたときでも悔やまれた。だって、そんな面白い旅に立ち会えなかったんだもの…。ハナが病気がちになったのはその後からだった。それからハナと母のドライブは病院の往復ばかりだった。
二匹の犬とクルマにまつわるエピソードが意外と狭い範囲での話であるのがちょっと申し訳ない。でも田舎の家にやって来た二匹は毎日のように野山を駆け回り、小川で水浴びをし、いつも好奇な目をあちこちに向けていた。二匹は別々のところからやって来たにもかかわらず、男女の愛が芽生えることはなく、傍からは仲の良い兄妹みたいに見えた。
彼らは今、家の一番古くて大きな桜の木の下で眠っている。
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