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例えば、ドアミラーで始まる恋、始まらない恋
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たとえば新しい恋が芽生えるか、芽生えないかという微妙な時。本人はハッキリとした自分の気持ちは打ち明けず、恋に落ちた相手の良いところばかりを説明したがり、パス(お断り)するときはネガティブなことをあれこれ挙げ連ねて言い訳にするもの。実は先日、クルマ選びもちょっとこれに似ているな、と思う出来事がありました。
仲良しの女友達の愛車の車検がもうすぐ切れるため、彼女は現在、新しいクルマを探しています。今の愛車はドイツ製のスポーティなコンパクトモデル。少しハンドルが太くて重いけれど、街中ではコンパクトなボディサイズが扱いやすいし、ドライブフィールも彼女好み。そこでもう一度車検を取ることも念頭に置き、他のモデルを見てまわっている最中なのです。
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そんな彼女がお友達から最近薦められたのがフランス製のコンパクトモデルでした。そのクルマについては私も相談を受け、私も個人的にお気に入りのモデルだったため、とりあえずは話を聞く側に徹した後で、試乗を提案しました。クルマのことがまったくわからない女性ではないのです。それにデザインと質感と価格面のバランス、お店の方の対応も含め、かなり気に入ったようでした。そこでドライブフィールにもこだわりを持つ彼女にとって試乗はきっと最終決断の機会となるはずだと思い、試乗を勧めた次第です。私からのアドバイスはその後でも色々とできますからね。
試乗をした後で、早速彼女から電話がありました。すると当たり障りのない感想を述べたあと、ネガティブな感想が遠慮がちながら飛び出してきたのです。「(オヤオヤ〜、これは風向きが変っているぞ〜?)」。どうもそのクルマを候補から外す理由を探しているように聞えます。とにかく理由を聞き、わかる範囲で説明をし、話し合い、彼女もある程度は納得してくれたようでした。それなのに最終的にパスするきっかけを作ってしまったのは私かもしれません。
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それまでと違う明るい声で「そうだ、一つとっても気に入ったところがあったの」と言うので、私も「なーに?」と食いつきました。それはリモコンキーでドアをロックする際にドアミラーが自動的に格納される機能でした。「うーん、それはね、最近ではかなり普通の装備かなぁ」と私。“特別な装備”として伝えるようなウソはつけません。それでチャン、チャン。彼女がそのクルマに想いを寄せる特別な理由が完全になくなってしまったのでした。ちなみに現在の彼女の愛車にも当然ドアミラーの自動格納機能は付いていたはずで、設定をしていなかっただけ。3年も付き合っていながら知らなかった恋人の素敵なところを今さら知らされたショックもあったようです。
それは新しい恋人になるかどうかの相談を受けているかのようなやりとりだったわけで、私はせっかくのチャンスをぶち壊しにしてしまったのかもしれず、何だか申し訳ない気分でした。
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ところがクルマ選びは人間の恋人探しと違うのがいいところ。自分が望めば、候補がすぐに見つかるのですから。今度は再びドイツ車。実は候補にも上がっていなかったメーカーの手ごろなサイズのスポーツモデルを別のお友達から薦められ、気に入り、試乗後には「恋に落ちたわ〜」ですよ。おまけに「食わず嫌いはダメね…」ですって。今度は良い点ばかりを私に説明してくれますから、かなり気に入っている様子です。
結局、彼女のクルマ選びはデザイン、質感、お店の方の対応に加え、ドライブフィールに対する好みがそのへんの男子よりもうるさいことが判明。ただ別の女性なら、気に入っているモデルのドアミラーが“さらに”自動格納式であったら「ステキ!」と、それが最後の一押しとなるきっかけになるかもしれません。
クルマのセールスマンは本当に大変。どこにファイナルアンサーの“YES”/“NO”スイッチが隠れているかわからないのですから…。でもそれだけクルマには色々な魅力が隠されているとも言えるわけです。それが例えばドアミラーかもしれないのです。
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