|
しあわせの青い鳥 |
 |
|
で、ショーコの続きである。
そんなわけで、黄色いビートの君となったショーコは、その後、プジョー306を買いそうになったところで仕事に行き詰まり、心機一転、それまでの大手メーカー営業職からアロマテラピストへと大転身を遂げ……るはずだった。ところが、人生とは何が待っているかわからないもの。ショーコのもとに運命の出会いとやらが舞い降りて、劇的に突然に、結婚しちゃったのである。転職を契機に一度は切り捨てた、「母になる」という女の幸せも手に入れちゃった。今どき、結婚や出産ばかりが女の幸せじゃないのは本当だが、女が女である限り、幸せのひとつであることも間違いない。
そのショーコと5年ぶりの再会を果たしたのは、一昨年のことだった。カーグラフィック誌の読者が主催し、私が毎年足を運んでいる関西の秋のイベント『Autumn Meet 2005』なるクルマ好きの集いに、ふらりと遊びに来てくれたのだ。
3歳になる坊やを乗せて、ショーコが運転してきたのは、先代のブルーバードだった。何の変哲もない国産ファミリーカー。しかもチャコールグレーのような地味地味のシルバー。かつてはロードスターとビートを、MTでビュンビュン走らせ、プジョー306を買おうと考えたほどのクルマ好き女と認識するには、かなり厳しいクルマである。
|
|
 |
しかしブルーバードのドライバーズシートに座るショーコは、するりと肩の力が抜けていて、ヒジョーにいい女に見えた。肩で風切る20代女も可愛いが、適度にスキができた40女はもっと可愛い。一人で頑張っていた彼女も好きだったが、「あーあ、アタシも洒落た服着てプジョーかアルファにでも乗ってみたいもんだわよ」などとブツブツ言いながら、毎晩ゴクリとビールを飲んでいる彼女も私は好きだ。前しか見ていないようなフリを決め込んで、大またで闊歩していた若き日の彼女よりも。ずっとずっと。
 |
|
ショーコは今日も地味なブルーバードで、亭主を駅まで送り、子どもと一緒に大根を買いにスーパーへ出かけるのだろうと思う。夫の転勤で住むことになった熊本の田舎町には似つかわしくない、軽やかなボサノバでも聴きながら。 |
彼女はいつか再び、オープンカーに乗るのだろうか? あるいはイタリアやフランスのクルマに? それはそれで素敵だけれど、次のクルマがカローラになっても、ブルーバードをぶっきらぼうに走らせ続けていたとしても、ショーコがショーコでいる限り、私はずうっとショーコのことが大好きで、そして2人で会えばきっとまた、ワインのつまみにクルマの話なんぞしながら夜更かしするのだろうと思う。
そういえば、ショーコが結び付けてくれた広島のけったいなロードスター好きたちは、今頃どうしているのだろうか? って知ってるよ。何しろ私、ハブなショーコとつながり続けているんじゃけぇ。そこの会長! あっちの歯医者!! いつか会ったら……覚悟しておけっ。
|
|
|
|
|