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ヨンさまとビートル  

そのミエちゃんから、1年ぶりにメールをもらった。おぉ、ついにあのバックヤードビルダー男と結婚するの? と思いながらクリックして開いた彼女のメールには、こんな一文が。

「ところで、私、またまたクルマを買っちゃいました。女どうしデートしようぜ〜」

思わせぶりな言葉に、面白がってノセられつつ、5分遅れで待ち合わせのカフェに到着すると、そこで待っていたのは! 

ミエちゃんと、ピカピカのVWニュー・ビートル。そして……ステンレスの細ぶちメガネをかけた、背の高い華奢な男。レジメンタルタイがなんちゃらかんちゃらと、ツバをとばしながらまくし立てていたバックヤードビルダー男とは、趣がまったく違う。何しろ、ヤツなら絶対に選ばないだろうなぁ、と思われる、ピンクのマフラーなんぞ、襟元に巻いているのだから。遅れてきたヨンさまみたいだ。

「はじめまして〜」

さぞかし情けない声音をしているんだろうと、自分でもわかる声で挨拶をしながら横目でミエちゃんを見ると、ヨン様の後ろでふわりとした笑顔を浮かべている。人さし指を1本、軽く顔の前に立ててみせながら。

「ビートルはビートルでも、空冷のフラット4じゃないのネ。ふぅーん、意外っ。」

チクリとイヤミを言ってみたが、ウマの耳にナンとやら。

「だーって、古いクルマって面倒くさいでしょ? オリジナルにこだわるとか、バンパーの素材がどうとかこうとか、べーっつに、どうでもいいじゃない」

え、そういう世界がステキだって、うっとりしてたじゃん。現行のドイツ車なんて、あんなもんはタダの道具だ、とも言ってたよねぇ。

「クルマは新しいのがいい。それも道具として優秀なヤツ。で、デザインがいいのじゃないとネ。っていうか、いい機能はいいデザインに、現れちゃうものなのよ」

ちなみに、プジョー406ブレークに乗るヨンさまは、グラフィック・デザイナーだ……。

女は女でも、女すぎるぜミエちゃん。でも、そんなアナタが、私はやっぱり大好きだ!