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俺?のカイエン  

前回でも触れたが、大きくてゴツいSUVは、ドライビングコンシャスなスポーツカーと同じくらいに、男性的イメージが強い。だからこそ、それを操る女性の中の「女」が、鮮やかに浮き彫りにされるものだと思う。それが証拠に「男らしく乗りたい」と希望しているあのチィちゃんだって、愛車のステアリングを握ったとたん、すこぶる「女」に見えてしまうから面白い。

チィちゃんとは高嶋ちさ子さん。そう! 清らかな音色の演奏だけでなく、キュートなルックスから飛び出す毒舌でも人気のヴァイオリニストである。実は彼女、私の妹の同級生。そんな縁で、私も幼少のみぎりから彼女のことを知っている。可愛い顔もお茶目な性格も、出会った頃から変わらない。ついでにクルマ好きも、ね。ディーラーが立ち並ぶ環八通りまで、チャリンコとばしてカウンタックを眺めに行くような小学生時代を過ごしたチィちゃん。免許をとってすぐに乗ったのは、お兄さまと共同購入した中古ビートル。もちろんMT。その後乗ったユーノスロードスターも、やっぱり当然MTだった。


で、現在の愛車はといえば、恋焦がれて手に入れたポルシェ・カイエンなんである。ご主人の仕事の関係でたびたび出かけたロスアンゼルスで見かけたカイエンの多くは、女性ドライバー+黒ボディ×タン内装の組み合わせ。ならば自分のは男らしく仕立てたい、と考えた彼女のカイエンは、黒ボディ×黒内装。ブレンボの真っ赤なキャリパーがのぞく足元に、インチアップしたタイヤを履かせ、テールゲートには特注のタイヤキャリアも背負わせた。しかもSじゃないわよ。ターボである。

「女のクルマには見えない」と、クルマ好き女にとって最上級の褒め言葉をプレゼントすると、素直に喜んでくれるからこっちも嬉しくなる。だが、「チィちゃんが乗ってると優雅でエレガント」という感想は、まだ伝えていない。エレガントなクルマ嫌いな彼女から、毒舌が返ってくること必至なので、ネ。

ちなみに「男らしさ」と同時に、彼女のクルマ選びを貫くもう一つのテーマは「新しさ」。古いヤツにはまったく興味がないという。マセラティ・ビトゥルボとか、もっとディープにアストンのDB6なんかも似合いそうなのに。などと考える私に、彼女はスパっと言ってのけた。

「ルーシーに比べたらクルマなんて、どんなに古いったってヒヨっこでしょっ」
ルーシーとは、カイエンと同じく、チィちゃんが自分で手に入れたヴァイオリン。名器中の名器といわれる、1736年製ストラディヴァリウス!の個体通称なのである。確かに夏のペブルビーチを彩る名車たちだって、旧くてもたかだか100年の歴史ですもんねぇ。。。腑に落ちない感覚をどこかに残しながらも妙に納得した、楽器といえばリコーダー以外無理っな私なのでした。