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2010年4月  
ニューヨーク・オートショー2010
新車の発表よりもル・マン優勝者とのバトルが楽しい
2010/4/2 

韓国製ヒュンダー・ソナータ
ハイブリッドは注目された
インフィニティよ! どうしたの、この顔?

最近、どのモーターショーに行っても、やはり環境メッセージがだんだんと強まってきている。4月2日から開催されるニューヨークモーターショーでも、その環境に対するアピールがどのメーカーからもハートに伝わってくる。

ワールド・プレミアとして注目されたのは、ヒュンダイ・ソナータ・ハイブリッド、電気自動車のシボレー・エクイノックス。アメリカン・デビューを迎えた環境車が、日産リーフ、ポルシェのカイエンSハイブリッドと918スパイダー、トヨタ・プリウスのプラグイン・ハイブリッドなどだ。アキューラTSXとスバル・インプレッサWRXのワイドボディも、夏まで市販車として登場されるモデルもアンベールされた。メルセデスからは、世界デビューを祝う新Rクラスと迫力満点のSLSのAMGレース仕様車が、そして同ブールの向かい側、BMWの新5シリースと500psのアルピーナB7も発表された。しかし、期待はずれだったのが、スタイリングが中途半端なインフィニティQX。最近発表されたばかりの日産パトロールがベースになっているけど、パトロールのほうが十倍格好いい。このQXのグリルとヘッドライトの組み合わせがどうしてそんなにバランスが悪いのか、疑問。


出番を待つヘイウッド選手 レース中のハーリーは真剣そのもの

ルマン優勝者とNYで対戦

ところで、ポルシェのブースの前にたどり着いたら、おもしろい光景に直面した。同ブースの中にマイクロソフト製作のXボックス360の人気ゲーム「ニード・フォー・スピード2シフト」が2つ設置されている。しかも、その隣りに立っているのは、何とレーシング・スーツ姿のハーリー・ヘイウッド選手じゃないか。62歳になっている彼は、ルマン24時間レースで3回優勝し、デイトナ24時間レースを5回も制覇した伝説的なドライバーだ。その日、ハーリーに与えられた仕事は、(インターネットの)オンラインながらアメリカ全国のXボックス360のユーザーとリアルタイムでバトルをすることだった。そうか。ルマンの優勝者とゲームで対戦だ。日本でも似たようなことをやっているけど、こういう伝説的なドライバーとは、なかなかリアルタイムでバトルできないと思う。

ハーリー選手が
対戦直前の練習走行
トップに踊り出るハーリー選手

今回のサーキットはサンフランシスコ近くのラグナセカで、マシンは911GT3RS。8人で2周だけで競うという。同サーキットで本物のGT3のハンドルを握ってレースの好成績を残している彼は、バーチャルのレースも相当速い。

8人のゲーマーがオンラインでつながった時に、第一レースのスタート開始。ポールポジションから始まったハーリーは超スムーズなドラテクで、他のマシンから楽々逃げ切って優勝。「勝負にならない。それじゃつまらない」と言った彼は、次のレースからはビリからスタート。2戦めから僕が見た5レースでは、上手い具合に3、4台は抜くんだけど、勝てなかった。ちょうどオップに躍り出ると思いきや、後ろのドライバーがわざとぶつけてきてハーリーをコースアウトさせたりして妨害。音声マイクで他のドライバーとつながっていたハーリーが「ね、君たち、お願いなんだけど、できたらここをリアルワールドだと思って、クリーンな勝負をしようね。なるべくぶつけないでね」と丁寧に依頼。でも、ほとんど対戦者は無視した。特にクラッシュの多いコーナーはレース開始直後の第一コーナー。彼がスゴいのは、どれほどぶつけられてビリになっても、フィニッシュ時には、必ず3位以内にチェッカーを受けてたこと。そのガッツとドラテクに感心した。ラインどりも完璧だったね。コーナーから立ち上がる時のアクセル・オンが思っていたよりも多少早くできるという技が勉強になった。今度、応用してみとよう。ハーリー、ありがとう!


 ニューヨークでヴォルクスワーゲンが2連勝 2010/4/9 

部門のトロフィが勝者を待つ

先月、ジュネーブ・モーター・ショーでワールド・カー・アワードの4部門のファイナリストたちを発表したことは覚えているのかな。トヨタ・プリウス、ホンダ・インサイトなどが有力候補だった。大賞のワールド・カー・オブ・ザ・イヤー賞には、メルセデスEクラス、トヨタ・プリウス、ヴォルクスワーゲン・ポロの3台がトップに立った。このような世界的な賞を気にかけてる読者ならわかるだろうけど、ポロは一昨年欧州カー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞したし、プリウスは11月に、日本カー・オブ・ザ・イヤー賞をゲットしてる。それに、Eクラスは世界的に非常に高い評価を得ているので、僕ら選考委員は、投票する前から今年のアワードは接戦になるだろうと期待していた。

例年どおり、今年のワールド・カー・アワードの表彰式も、ニューヨーク国際オート・ショーの一般公開に先立って、4月1日(木)に同市のジャヴッツ・センターで行われた。もう恒例になってきてるし、この数年このコラムに書いてるので、覚えてくれる人もいると思う。特に2年前にマツダ・デミオが受賞したし、その前にはレクサスLS460が大賞を獲得してる。

さて、今年も、会長を務める僕ピーター・ライオンは、月曜日からNY入りしてリハーサルなんかもやって、4月1日には世界各国のプレス300人以上が、朝8時前から、発表会場に集まってくれた。

ワールド・カー・アワードは、今年も25か国から59人の選考委員たちが2回の投票をインターネットで行なった。4つの部門とは、大賞と、デザイン賞、パフォーマンス賞、グリーン(環境)賞だ。

Wグループのワルター・デ・シルバ氏が大賞のトロフィをもらいに舞台に
あがった「このトロフィは重いね」と

メイン・ステージには、大賞のファイナリストとなった3台の前に、僕が立って受賞車の名前が入った封筒を開けて、それを読み上げ、発表した。「今年のウィンナーは…VWポロ!」と発表した時、VWグループのスタッフは大声を上げて騒ぎ出した。

特に、喜んでくれたのが、世界的に有名なVWグループのチーフ・デザイナーの、ワルター・デ・シルバ氏だった。同社の代表としてトロフィを受け取りに来た彼は、驚きと喜びを隠せなかった。

授賞式の後に、何人かの選考委員と話してみたけど、ポロの総合パッケージング、優れたデザイン、快適な走り、高い質感、燃費、性能、それに低価格に感心したと、口々に言っていた。「トヨタのリコール問題は投票に影響を及ぼしたか?」と聞いたら、「それは無視できないね」という選考委員が多かった。

VWグループの代表、デ・シルバ氏がグリーン賞もトロフィを見せる デザイン界の巨匠
ワルター・デ・シルバ氏が
VWポロが獲得した2賞を手に

グリーン賞も獲得でVWグループが圧勝

ところで実は、ワールド・グリーン・カー賞を受賞したクルマもポロだった。

たった2点差でプリウスに勝ったポロ・ブルーモーション(ターボ・ディーゼル)の勝利は、リコール問題が影響しなかったとは言えないと思う。やはり、ちょうど選考委員たちが投票する時、リコール問題が一番騒がれてたからね。でも、それよりも、日本とアメリカと違って、ハイブリッド車は欧州ではまだ支持されていない。特に、最新のポロのような小型クリーン・ディーゼル車に比べて、ハイブリッド車の燃費、CO2排出量はまだ負けている。しかし、それだけではない。ヨーロッパ人からみると、「ハイブリッド車は技術的には非常に優れている」と思っている人は多いけど、実際のところ、走りや運転していて楽しいというファクターではディーゼル車に負ける。つまり、プリウスのようなハイブリッドは、欧州でもっと支持されるためには、燃費やCO2では今以上に小型ディーゼル車のレベルを上回らなければならないし、走りという部門でも、もっとファン・トゥ・ドライブ(fun to drive)感を強めなければならない。そういうことで、結果としてポロが何と2賞ゲット!

アウディR8が
パフォーマンス賞をゲット!
今回、アメリカ車のカマロが
初めて賞を獲得した

でも、それだけではない。パフォーマンス・カー賞にはアウディR8が受賞したということは、VWグループは4部門中3部門を制覇!

最後に、デザイン賞には、シボレー・カマロがトロフィを獲得した。これは、同賞が7年前に始まって以来、アメリカ車が初めて賞をとったということになる。さあ、来年の賞には、日産リーフの電気自動車がどう評価されるかが楽しみだ。


 トヨタ復調! あれは宇宙線の影響か? 2010/4/16 

宇宙線の影響か?

トヨタのリコール問題がアメリカで大騒ぎになっていることについて、ヨーロッパのジャーナリストなどは不思議がってるということは前にも書いたけど、日本でも「自動車業界が不振のアメリカの陰謀じゃないか?」という声も少なくない。

ところで、トヨタ・プリウスなどの誤作動について、アメリカ連邦捜査官は、問題になっている予期しない急加速は宇宙線の影響を受けているかどうかを検証しているそうだ。僕がオートショーのためにニューヨークに行っていた頃、ちょうどテレビのニュースでもNASAの科学者などがその可能性についてコメントしていた。宇宙空間からの放射線の影響で飛行機や宇宙船のコンピュータ・システムがちょくちょく誤作動を起こすことは、よく知られている。

この宇宙線の放射によってソフトウェアがクラッシュする。でも、問題の跡は残らない。電波ならブロックできるけど、宇宙線は遮断できない。トヨタ・アメリカは、トヨタ車のエンジンはこういう現象の影響は受けないと話している。でも、飛行機でもあることなら…心情的には納得しやすいかも知れない。


こんなトヨタ車が売れている

「だからって、アメリカ車には乗れない」というユーザーも

いっぽう、トヨタ社のセールスは、リコール問題で打撃を受けたものの、アメリカでも日本でも3月期の売り上げは劇的に上昇している。前年比でみると、アメリカでは去年の132,802台から41%上がって今年の3月は186,863台というし、日本でも51%上昇だって。

これだけセールスが上昇した理由は、リコール騒ぎで打撃を受けたトヨタ社が、それを打破するための実質的な対策を立てたからだ。無利子のローンやリース価格のディスカウントなど、いろいろなサービスだ。たとえば、新しくトヨタ車を買うと、5年のワランティか3年間のサービスのどちらかを選べるとか、かなり説得力のある内容だ。

アメリカでは4月の復活祭までの期間に、ディーラー各社が「支払いは6ヶ月先からでいいよ」キャンペーンや、無利子や超低利のローンを導入して、販売キャンペーンを行ってる。特にフォードなんかはトヨタにがっかりした客を取り込もうと頑張っている。1000ドル単位でキャッシュ・バックというキャンペーンもあるしね。だから、トヨタも「スロットル不信」を払拭するための努力をして、その成果が上がったわけだ。

トヨタ・アメリカのミゲル・フォンセカ常務取締役は、「これだけ充実した内容なら、顧客に価値のあるサービスを提供するだけでなく、精神的にも安心してトヨタ車に乗ってもらえるはずだ」と言ってる。「トラブルの無いトヨタ車」という、品質への信頼性を維持するための対応だ。

アメリカ・トヨタ・モーター販売社のシニア副社長は、「3月にこれだけ販売台数が増えたのは、ユーザーのトヨタ車の安全性と信頼性にたいする支持と、ブランドへの信頼感のお陰だ」と語った。

実際に「トヨタにリコールがあったからって、アメリカ車には乗れないじゃない?」というユーザーの声も聞いたしね。忘れている人も多いけど、だいたい世界のクルマの安全性がここまで上がったのは、トヨタがあったからだ。

とはいえ、アメリカ運輸省はトヨタ社がアクセル装置に問題があったことを速やかに報告してなかったことに対して1630万ドル(約15億5千万円)の罰金を請求すると言っている。問題の究明とそれにたいするアクションが3ヶ月遅いぞ、ということで。でもトヨタ側はまだ支払うかどうか、発表していない。

アメリカでは、誰でもマイ弁護士(とマイ・ドクターとマイ・セラピスト)を持ってる。友達と話していても、弁護士のことがすぐに出てくる。ちょっとでも問題があると弁護士。問題を起こせば弁護士が儲かる。だから、問題を製造してるような社会になってる。今回のリコール問題は、トヨタだけじゃなくて、海外に進出する日本企業には、覚えておいてもらいたい教訓だね。


 信頼されるホンダ、人気のマツダ 2010/4/26 

北米で「最も信頼性の高い車」賞受賞

国際的に日本車が、特にアメリカではあのリコール問題から、トヨタ車に風当たりが強い事は再三報道されているので、みんな知ってると思う。それに、今の不況や失業率が減らない状況を思うと、自動車産業の未来は、明るいとは思いにくい。

でも、長いトンネルの向こうに光が見えないわけでもないよ。というのは、アメリカでホンダ車が「もっとも頼れるクルマ」賞を受賞したし、アイルランドとオーストラリアではマツダが、記録的にセールスを伸ばしているんだ。

日本でも名前が浸透してきた消費者リポート、J.D.パワー。その「2010年でもっとも頼れるクルマ調査」では、ホンダCR-Vとホンダ・フィットをそれぞれのクラスで「もっとも頼れるクルマ」として推奨してる。
http://www.jdpower.com/autos/articles/2010-Vehicle-Dependability-Study-Results/page-3/

この調査では、J.D.パワーは、新車購入した2007年型車のその後12ヶ月以上の状態について、ほぼ200ポイントをチェックして、ランキングを発表。中型車クラスでは、ホンダ・アコードもトップ3に入っている。

ホンダCV-Rは、J.D.パワーの2009年版リポートと、アソシエイツ・イニシャル・クォリティ・スタディという調査でも、そのクラスでトップにランクされていたの。だから、3年連続トップを獲得したことになる。


アイルランドとオーストラリアで
販売が好調なマツダ

マツダ、記録的にセールスがアップ

アイルランドでは(火山の噴火はアイスランドだよ、念のため)、マツダに乗り換える人が増えている。アイルランドのマツダ・ディーラーが、イギリスのディーラーより頑張ってるのかな。この国では3月期に、ホンダ、アウディ、シトロエン、フィアット等のメーカーを押さえて、マツダのセールスが上昇して、マーケット・シェア3%を獲得。トヨタ、日産についで、北アイルランドで第3の日本ブランドの座に着いた。

今年の3月、マツダは前年比でなんと81%も上昇! それも、同国が推奨している古いクルマを廃車にしてエコな新車を買い替えると補助金が出るから、っていう理由からじゃない。企業やレンタカー各社などがまとめ買いする、「フリート顧客」も入れても、この補助金あっての買い換えでマツダに乗り換えた率は、全体の23%だ。つまり、新車4台のうち3台は、好きだからマツダを選んだということが言える。

全体的にみて、マツダのセールスは前年より28%もアップ。自動車全体のセールスの伸びは13%だから、これはマツダの大躍進。

好調の理由は、海外でマツダ2と称されるデミオと、同じくマツダ3と呼ばれるアクセラの人気の強さだ。この2モデルはオーストラリアでも順調で、2009年3月期との比較でも、この強力な2車種のお陰でマツダはセールスを10%も伸ばしてる。特にマツダ3(アクセラ)は単独で20%も販売台数を増やした。

このコラムで、前にも何回か言ってるんだけど、マツダは日本でより海外で人気が高いということは、興味深い。アメリカでも好評だしね。じゃ、なぜ日本では…? やっぱり、クルマの嗜好と「クルマに何を求めるか」が、海外と日本では根本的に違うからだと思う。海外では、日本車の中ではマツダが一番カッコいい、スタイルがいいと評価されていて、ユーザーの「美しいクルマを買いたい」という意思がマツダ人気に現れている。自分の個性の表現のひとつとして、マツダを選ぶ。これは僕だけじゃなく、殆どの海外のジャーナリストもそう考えてる。おそらく、これから先もマツダはその地位をキープするだろう。