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2007年7月 掲載分  
  ECOフェラーリとECOポルシェ(中篇) 2007/7/6 
フィオラノでおこなわれたイベント会場に出品されたコンセプトカー、「ミッレ・チリ(伊語で1000km)」は、未来志向のテクノロジー満載のECOフェラーリで、関係者間で話題となっている。その目玉となるフェラーリ製のフル・ハイブリッド・システムに関しては先週、レポートしたが、その他にもフェラーリは省エネ+環境コンシャスな技術の開発に余念がない。

フェラーリは以前からインペリアル・カレッジ・ロンドンと共同で、アクティブ・エアロダイナミックスに関する研究をしていて、‘シンセティック・ジェット(synthetic jets)’というテクノロジーの開発がおこなわれている。これは、自動車のアンダーボディの後方部分に取り付けた直径20cmくらいのフラップを開閉することによって、エアフローをコントロールするというもの。エアフローを操ることによって、様々にダウンフォースをコントロール、加速力や制御力を向上させようというものだ。

このテクノロジーは2年の研究開発を経て、いまだ世に出てはいないものの、ロードゴーイング・モデルのプロトタイプは1年後をめどに開発される予定だ。これによって、更なる軽量化を図る狙いだ。

この他にもフェラーリは様々にラジカルな開発をおこなっている。たとえば、今は禁止されたが、以前F1で使用されていたダイレクトインジェクション(直噴エンジン)を搭載した市販車の導入も着々と準備が進んでおり、より燃費がよく、よりスロットル・レスポンスの鋭いフェラーリ・モデルの登場となる。

フリクション・ロスを一層減らしたり、ギアボックスを現在のものより3分の1程度軽く作ることも計画されている。また近未来のフェラーリはバイオエタノールを燃料に走るモデルも計画されている。

これらの技術を駆使し、従来のモデルより、はるかにクリーンでありながら、パワー・ウェイトレシオの向上したモデルを世に送ろうという試みだ。むろん、軽量化は更なるハンドリングの向上につながる。

フェラーリはブレーキも新世代カーボンセラミック製のものを採用、小さく軽くなる(599に装着された400mmに比べて新型は300mm)とともに、重くでかいブレーキブースターも不要となる。

更なる軽量化は近未来のフェラーリのノーズの部分にF1スタイルのカーボン・クラッシュ構造を採用することによって実現しようと計画している。カーボン自体、アルミ製のボディよりも軽いうえに、カーボンが衝突の衝撃をより効果的に吸収するためにボディの長さも200mm程度短くすることができるからだ。

今回フェラーリ創立60周年記念イベントで、フィオラノにディスプレーされたフェラーリ“ミッレ・チリ”は純粋にフェラーリがいかに小さく、軽く作れるかを端的に表現したものであるが、真の狙いはこれら近未来のテクノロジーの数々を内外にアピールすることにあったことは間違いない。
(次週の後篇、ECOポルシェに続く)
  ECOフェラーリとECOポルシェ(後篇) 2007/7/13 
環境にやさしい省エネ・スーパースポーツの開発生産を考えているのは、フェラーリだけでなく、一方のスポーツカーの雄、ポルシェも当然その対策に取り組んでいる。いや、取り組まざるを得ない状況に追い込まれている。

先ごろ発表されたEU(ヨーロッパ連合)の新しい二酸化炭素排出規制に関するガイドラインは、スポーツカーメーカーにとっては、非常に厳しいものと言える。ブリュッセル(EUの本部)は、2012年までに全ての新型車の平均CO2排出量を、1kmあたり130g以下にすることを義務付けようと努力しており、自動車業界にこの数値目標を実現するよう強くはたらきかけている。

ポルシェ社の重役、ミハエル・マックは、他の欧州小型車&普通車メーカーが二酸化炭素排出の削減努力を怠ってきたと指摘、憤りもあらわに次のようなコメントを発表した。『欧州の小型車メーカーが今日までに減らしたのCO2の量は、2002年の2%減に過ぎず、彼らの取り組み方は失望以外のなにものでもない。』

ポルシェ自身は、直噴ガソリンエンジンを導入することによって、新型カイエンの二酸化炭素排出量を15%減らしたのをきっかけに、来年には911の水平6気筒エンジンにもこの省エネ直噴エンジン技術を投入する予定で、その結果、2002〜2008年の間に、ポルシェ社は全体で、従来より20%も二酸化炭素排出量を削減できるという計画だ。

つまり、ポルシェの中で最も燃費効率の良いモデルであるケイマンは、1km当たり、222gのCO2、カイエン・ターボで1km当たり358gのCO2排出という計算である。

ポルシェは、全世界での二酸化炭素排出問題に対する関心の高まりに神経をとがらせており、特にEUが1km当たり130g以下のCO2排出という数値目標を義務として課すのではないか、数値目標が達成できなかったメーカーに対しては罰金を含む厳しいペナルティが課せられるのではないかと懸念しているようだ。

もしEUによって、すべての自動車メーカーに平均で1km当たり130g以下のCO2排出規制が義務付けられれば、ポルシェ社は存亡の危機に面することになりかねない。

したがって、ポルシェ社としては、130gのCO2という絶対数値ではなく、メーカーとして何パーセント削減したかという、相対的数値の規制にしてほしいと、EUに対しロビー活動をおこなっているという。

ポルシェは前述の直噴ガソリンエンジンの開発導入と並行して、近々ハイブリッド・パワートレーンも発表する。ハイブリッド・システムは、ボッシュとアウディと共同で開発しており、2010年までには現行カイエンに、ガソリン+モーター式ハイブリッドV8エンジン搭載モデルをデビューさせる計画で、これによって燃費を1リッター当たり10.6kmにまで改善する計算だ。また、2009年にデビュー予定のポルシェの4ドア・スポーツサルーン、パナメーラには最初からハイブリッド・モデルがラインナップされるかも知れないという噂もある。

しかし、ポルシェはディーゼルエンジン搭載モデルに関しては消極的であるという。ディーゼルはポルシェの哲学に反するという。ディーゼルは重く、ガソリンエンジンに比してそれほどクリーンだとも言えず、アメリカや日本市場で受け入れられないというのが、その理由らしい。
(来週はアルファ・ロメオ159GTAをレポートします)
  159GTA 2007/7/20 
アルファ・ロメオ159の最高性能バージョン、GTAのテストがニュルブルクリンク周辺で目撃され始めている。GTA(Gran Turismo Alleggerita)というバッジが最初に与えられたモデルは、苛酷なことで有名なタルガ・フローリオ(イタリア・シシリー島でおこなわれた公道レース)に出場した1974年1600ジュリア・スプリントGTAである。

GTAのA(Alleggerita)とはライトウェイトを意味する。したがって、その当時のGTAモデルは、軽量化を付き詰めることによって動力性能を高めるということがすべてだった。しかし、近年になってGTAモデルがアルファ・ロメオに復活してからは、主にパワーアップに主眼がおかれて開発がおこなわれている。当然、開発中の159GTAのボンネット下に搭載されるV6直噴エンジンも、大幅にスープアップされ、少なくとも350馬力以上にはなる模様。4つのテールパイプから咆哮を上げながら発揮する、0-100km/h加速は6秒フラット、最高速は250km/h超というハイパフォーマンスは、現行156GTAを軽く上回る。

価格についての公式コメントはないが、156GTAがその装備や性能に比べて比較的安価なバーゲンだったことを考えれば、159GTAもそれに倣うのではないかと想定される。為替レートが円安に振れていることもあるので、日本での販売価格は750〜800万円超であろうか。ともかく、“M3は欲しいけれど手の届かない層”がターゲットとなる。

159GTAは、一層改良された全輪駆動システムとクロスレシオの6速MTが組み合わせて装備される。エンジンの冷却効果を増すためにフロントのエアインテークは低くワイドになり、フロントホイールアーチの後ろには加熱された空気を排出するベンチレーションが設けられる。来年のジュネーブショーでお披露目される時には、リアウィングもボディと同色になって登場する予定。

159GTAのほかにもアルファ・ロメオは様々なプロジェクトをかかえていて、当面は忙しいようだ。8Cコンペティティオーネの生産とデリバリーが急がれている一方で、2009年を目指して166の後継車、169の開発が進む。169には前述の3リッターと3.5リッターのV6エンジン搭載モデルと2リッターと3リッターのディーゼルエンジン搭載モデルが用意される模様。

そのほかにも、ニューミニや新型フィアット500に対抗する、ジュニア・モデルの開発や近々発表予定の159TI(Turismo Internazionale)の計画も抱えている。TIもGTA同様、レースから派生した栄光のモデル名だが、こちらは主に、ボディキット、スポーツサスペンション、ブレーキキャリパー、19インチ・ホイール、トリムといったチューンにとどまる。ボディカラーもレッド、グレー、ブラックといったアルフィスタが好みそうな特色が揃えられる模様。価格は150〜200万円アップといったところか。
  ポルシェ-アウディ連合成立:R4と次世代ボクスター&ケイマン共同開発 2007/7/27 
ポルシェがVWグループを傘下に収めたことは以前レポートしたとおりだ。そして今度は、ポルシェとアウディが共同で、アウディのエントリーレベル・スポーツクーペ&ロードスターである、R4、および次世代のボクスターとケイマンを開発することで合意したという、スポーツカーファンにとっては見過ごしにできないニュースを欧米誌が伝えている。

アウディのRシリーズはBMWのMシリーズに相当するもので、将来的には4つの強力なモデルでラインナップが構成される。上から、ルマンを制したディーゼルパワー・レースカーをベースに開発されるR10スーパークーペ、次世代のR8(ロードスターも計画されている)、911とボクスターの中間モデルにあたるR6、そして、700万円前後の価格を想定したミドエンジン2シーターである、このR4だ。

次世代ボクスター(コードネーム981)&ケイマン(コードネームC8)は、どちらも2011年デビュー予定。共同開発されるR4のシスター・モデルといっても、ボクスターとケイマンが、当然6気筒ボクサー・エンジン搭載RWD車である一方、R4は4気筒と5気筒エンジンを搭載、アウディの誇るロー・フリクション(摩擦抵抗の低い)トルク配分型クワトロシステムで全輪を駆動する。

このポルシェ-アウディ連合は、双方にとって多くの(そして大きな)メリットが想定される。むろん、開発にかかるコストを軽減できることは言うまでもない。加えて、ポルシェはアウディの持つ、アルミ・スペースフレーム・ボディやパワフルなディーゼルエンジン、さらに軽量化されたクワトロシステムやダブルクラッチ(デュアルクラッチ)式トランスミッションを手にすることになる。一方アウディは世界トップクラスのポルシェのエンジニアリングや世界有数の高収益率に支えられたポルシェの資金をあてにできるというものだ。

R4用のパワーユニットは、アウディTTクラブスポーツ・コンセプトにも採用されるターボチャージャー付き300馬力エンジンと、これまたTTの高性能バージョン、SR用に改良を受けている350馬力2.5リッター5気筒エンジンが用意される。

R4と次世代ボクスター&ケイマンは、新世代デュアルクラッチ式トランスミッション、ナイトビジョンを含む最新型ドライバー・アシスタンス・システム、各種冷却装置、そしてサスペンション方式を共用する。

しかし、R4と次世代ボクスター&ケイマンのスタイリングはまったく異なるとのこと。ポルシェとアウディともに、新しく就任したデザインチーフの腕の見せ所といえよう。

この一見理想的に見える連合も、それなりに悩みも抱えている。最大の問題はタイミング、つまり各モデルをいつデビューさせるかというスケジュール調整にある。例えばポルシェは、次世代ケイマンが工場から出荷される2012年までぎっしり予定が入っている。アウディとしてはR4を2010年にはデビューさせたいという意向を持っている。2010年は、ポルシェ・パナメーラ(4ドア・クーペ)の翌年、次世代911(コードネーム991)の1年前、そしてカイエンの派生モデルやケイマンのフェイスリフトと同年にあたる。今やグループの総帥となったポルシェが、自社の収益を損ねたくないと思うのは当然で、すべてのことが上手く治まるまでには紆余曲折が予想される。

しかし、方向性においては合意しており、アウディQ5(中型スポーツ・ユティリティカー)とカイエン・ライトの共同開発など、今後もポルシェとアウディの間で続々と共同プロジェクトがスタートする気配が濃厚になってきた。